オークヒルズ市における爆弾爆発より12日後 14:00 オークヒルズ市街
私はファスナーと別れてから、しばらく市街を歩いた。
爆弾で吹き飛ばされた施設の復旧工事が進んでいる。
ふとその傍を見ると、何やら碑がある。
「これは、、慰霊碑か?」
よく見ると、どうも爆弾設置を防ごうとして戦死したWAP部隊員の慰霊碑らしい。
9人の名前が並んでいる。
「1個中隊全滅したのか、、。」
「いえ、1人は生き残りました。」
傍らから声がしたので、私は振り向いた。
「あなたは?」
「O.C.U.陸防軍のフォーマー兵長です、ここで全滅した中隊に所属していました。」
「ベオルブです、よくぞ御無事で。」
「ありがとうございます。」
そう言った彼は、私服に松葉杖といういでたちだった。
「かなりの負傷ですね、やはり爆弾のせいですか。」
「戦死した中隊長や仲間に比べれば、自分は運が良い方です。」
「Wanzerに乗っていれば大抵の爆風は防げると思いますが、、。」
「皆爆弾から至近距離にいましたから、特に中隊長はヴァンツァーから降りて爆弾の解除をしようとして、、。」
「いくら何でもそりゃ無茶な、、。」
「司令部からもそう言われました、でも、ここは民間の都市なんです、命懸けで護るのは当然でしょう?」
「、、、。」
彼の言うことは分かる。
それでも100%の同意ができないのは、私が生き残ってなんぼの諜報員だからか。
「それに、ここハフマン島は私の故郷ですから。」
「ハフマン島生まれの方ですか。」
「両親が入植して私が産まれたんです、うちの中隊は皆ハフマン島生まれで、特に中隊長はここオークヒルズに家があったんです。」
「あった?」
「爆弾の爆風で半壊したそうです、御家族はその前に避難してて、復旧工事も行われるとは聞いてますが、、。」
「、、、。」
この兵士も、そして彼の所属した中隊の隊員一同心から故郷ハフマン島を愛している。
当然この街、オークヒルズも。
恐らくU.S.N.のハフマン島生まれの兵士達も同じような心境であろう。
私はそう思う立場に無い。
ハフマン島生まれでないこともあるが、それ以上に自国すら冷酷に客観視しつつ仕事をこなすのが身上だからだ。
ただ、それはあくまで自分の中の事だ。
他人の生き様を否定する気はさらさらない。
そろそろバリンデンに戻らねば。
私はフォーマー兵長に別れを告げた。
「御武運を、兵長。」
「御元気で、あなたも。」
後日私は戦場でフォーマー兵長と再会することになる。
しかし、生身の彼を見るのはこの日が最初で最後となるとは、流石に知る由も無かったのである。
~つづく~
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